【番外編】夜色オオカミ~愛しき君へ~
「…橙伽。」
感慨深い想いに浸る私に不意に、急にトーンをおとした声がかけられた。
「…?」
「今日…だよ。この後のことだ。
本当に、逢わせてよかったのか…?」
「…!」
パソコンから顔をあげ、真っ直ぐな瞳が私を窺うように見る。
…“この後”
瞬時に読み取った細やかな気遣いを見せていたその心の内に、私は笑みを返した。
「彼女たっての希望ですよ?
貴方様が姫君をここへ連れて来た時からずっと言われ続けているのですから、これで逢わせないなどと言えば腹をたてるのは目に見えます。
朝から念をおされていますから…お気遣いなきよう…」
笑顔で答えると、少し表情が和らぎ…
「…祈咲、すげぇ楽しみにしてる。」
ふわり…笑んで、それだけを語った。
「嬉しいです。…陽世もですよ。」
私も笑顔を返し
――――その優しい心に感謝をした。
…彼が気にする理由
それは、
私の花嫁の…過去にあった。