【番外編】夜色オオカミ~愛しき君へ~
光が射し込む明るい室内がふっと陰を帯びる。
直後、ゴロゴロ…と遠くから雷鳴の音が響き出した。
「…一雨くるな…」
若君の呟きと同時に、ザァ…!と激しい雨が降り出した。
「やっぱきたか。」
あまり雨を好まない彼は苦々しげに言い放つ。
「えぇ…通り雨でしょうが…」
雨が降り込まぬように、開け放たれていた窓に手をかけながら…
…あの日もこんなに激しい雨が降っていたな…と、遠い記憶が脳裏を過った。
美しい思い出などとは言い難い……私と、陽世との……出逢いだ。