【番外編】夜色オオカミ~愛しき君へ~
『小言終わったか?』
『……!』
ぼんやりと空を眺めていた僕に不意にかけられた声。
振り返って視線を下に落とす。
そこには、艶やかな黒い髪と瞳の…美少年。
少し生意気そうな表情で、僕を見上げていた。
7歳になる彼は当主の孫、真神 十夜。僕が教育を任された大切な若君だったりする。
『若様、いかがしました?』
まだまだ小さな背に合わせ少し屈んで声をかけると、焦った様子でグッと腕を引かれ口の前で人差し指を立てた。
『しぃーっ!!』
『?』
キョロキョロと周りを気にし、挙動不審なその様子。
『…橙眞(トウマ)はいねぇか?』
『?…父は出て来はしないと思いますが…』
『ほんとか…?』
疑うようにじろりと黒い瞳がつり上がる。
『…この後は母と出掛ける用事があったはずですので。』
念入りに僕のその言葉を聞くとやっとほっと息をつき…
『橙眞に見つかるとまたうるせぇからな~。』
『……。』
…にやぁりと口の端を引き上げた。
『今日はな、コレだ!!』
『……!?』
そして得意げに子供が僕の目の前に突きつけたモノ…
それを見て、
嫌な予感に血の気が引いた。