【番外編】夜色オオカミ~愛しき君へ~
『おかしい…!絶対にこっちだと思うのによー!!』
ガサガサと草を揺らせながら悔しげに叫んだ彼を見て、反射的にベンチから立ち上がっていた。
『…何故そうまでして?
我らは人狼です。《直感》の閃きを…待たないのですか?』
…そして気づけば声をかけていた。
若君はゆっくりと振り返り、眉を寄せ…首を傾げた。
『はぁっ?そんなの待つわけねぇじゃん!
閃く前に見つけてやるって“閃かせる”のが《直感》じゃねーか!
そんなん待ってたらボロボロになるかもしんねぇし…それじゃあ偶然なんだよ。見つけたとか言わねぇ。
それに、だったら…――何のための力なんだよ?
いざって時に使えねぇと、意味ねぇじゃん!』
『……!!』
『見てろよ!あんなもん絶対にすぐ見つけてやるからな!』
最後に怒ったように怒鳴ると…さっさと踵を返し捜索へ戻って行った。
…僕は、声も出せず
彼の細い背中を見送った。
真っ直ぐな瞳は
真っ直ぐな言葉は
真っ直ぐなその心は
――――まるで矢のように、僕の心臓を一突きにした。