【番外編】夜色オオカミ~愛しき君へ~
小降りになった雨。
カチ…コチ…規則正しい時計の秒針の音だけが白い部屋に響く。
眠る彼女を見つめるだけの僕…時だけが静かに過ぎていった。
彼女が受けた傷の残酷さ…
目覚めた君に伝えなければならないのかと思うと、身を裂かれる思いがした。
「……」
眠る彼女の唇にそっと指を滑らせる。
包帯から覗く顔は所々痣に赤黒くなっていたが、それでも長く濃い睫毛に縁取られた大きな瞳と赤い唇が印象的な美少女だ。
あどけなさの残る小造の顔は中学生にも満たないのではないかという印象まで受ける。
…僕は、君を…何も知らないな…。
君がたった一人、酷い仕打ちにこの小さな身体で堪えてきたことも…君の歳も…名前ですら。
「……ん……」
「……!」
長い睫毛を震わせて、彼女は静かに――瞳を開けた。