【番外編】夜色オオカミ~愛しき君へ~
「…死んで…ないの…?」
小さな掠れた声で彼女の第一声はそれだった。
定まらない視線が僕を確認して包帯を巻かれていない左目が大きく見開かれた。
「だれ……?」
怯え強ばった顔に苦笑が漏れる。
「誰だと思う…?」
悪戯に笑って瞳を覗き込む。彼女はまた目を見張り…僕の頬に震える指を伸ばした。
「この目……見たこと……ある…」
「……っ」
僅かに触れた指先から電流のように熱くたぎる血液が巡るよう…。
花嫁のもたらす甘い花の香りは…まるで媚薬だ。
酔ってしまいそうな僕の思いなど知るよしもない彼女は、小さく「…ぁ…」と呟いた。
「あの時の……ぉ…狼……?」
恐る恐る震える声を出す彼女に、僕は笑みを深めた。
「…ご名答、よく出来ました。……君の狼だよ」
「……!」