【番外編】夜色オオカミ~愛しき君へ~
悪く笑む僕に彼女は一瞬目を見張ったかと思うと…くしゃりと愛らしい顔を歪めた。
「食べてくれるんじゃ…なかったの…?
お母様が連れて来たんでしょ?
…今度こそ……骨も残らないように、あたしを消す為に……」
「……!」
未だ夢の中をさ迷っているのか…人の姿の僕に向かって…。
「あたしは…もう、いいと思ったの…。
あたしは“いらない子”だから。
お母様は…あたしの顔が大嫌いなんだって…。あたしは、お父様に似てないから。
お父様はあたしがお母様に何をされても…見えないみたいに振る舞う。ずっと待ってた…本当のお母さんは…あたしを迎えに来ない。
あたしは…何の役にも立たない…誰からも…愛されない。
それなら…あなたが食べてくれるなら…いいって…
何にも必要ないあたしでも…あなたみたいな綺麗な狼の血肉にくらいは、なれるでしょう…?」
「……。」
一息に話すと、傷が痛んだのかハ…と小さな息をついて瞳を閉じた。
会話から彼女の境遇を垣間見た。
…君が僕に求めたもの
あまりに切ない…
――――自分自身の存在意義
糧としてなら…必要とされたと?