【番外編】夜色オオカミ~愛しき君へ~




一週間後



僕の一存で連れ帰った…未だ傷だらけの花嫁に、父は目をまるくした。



けれど…ガチガチに固まる小さな花嫁を見据え、父は一つ咳払いをすると



『…私は、娘が欲しかったんだ。見ての通りうちには可愛げのない息子だけなのでな。

…私のことは、“お父さま”と呼ぶように。』



『……!!』



小動物さながらに怯えた様子の陽世に、他には何も問うことなく…父は穏やかに笑って見せた。



『…ぅ゛う~……は…はひ…!おとぉさま…っ!』



『…!?』



陽世はまるで本当に幼い子供のように泣いて父を慌てさせた。



『あーあー、僕の花嫁を泣かさないで下さいよ。』



『なっ…なにっ!?』



滅多なことでは取り乱すことのない父のわかりやすい狼狽ぶりが可笑しくて、ついついからかうようなことを言ってしまう。



彼女は精一杯小さな身を乗り出すと、涙でぐしゃぐしゃの顔をあげた。



『ちっ…違う…ん、です……っ!

嬉しくて…っ。そう、呼べる人が……あ…あたしにもまだいるなんて……うぅー…』



『……。』



…陽世の両親の動向は随時確認していた。けれど…彼らが陽世の為に起こしたものは…何一つとしてなかった。



そして、彼女が帰りたいと泣くことも…。







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