【番外編】夜色オオカミ~愛しき君へ~
不意に…
『……!?』
『……。』
父が陽世の頭にそっと手を伸ばすと、彼女は自分を守るようにびくりと身を竦めた。
彼女にとってのその仕草は恐怖と痛みの合図だったのだ。
だけど大きな手は、優しくふわりと彼女の頭におりる。そして、傷だらけの少女を労るように撫でた。
驚いたような顔で父を見上げる陽世に胸がしくりと痛んだ。
きっと、父も同じように。
『これから、おまえの父は私なのだから…遠慮せずに甘えなさい。』
『……っ…』
陽世はまた…静かに涙を流した。
父はその間もただ黙って陽世の頭を撫でた。
優しく…優しく。
ゆっくりと、知って行こう…。
温かく…優しく…安心出来るものがあることを。
君の生きるこれからが温かなもので溢れているということを。
まず、今、君の流す涙が“温かな涙”であることが……嬉しい。