【番外編】夜色オオカミ~愛しき君へ~
それから日々はめまぐるしく移り変わる。
僕は陽世に礼儀作法から立ち居振舞い…言葉遣いに至るまで総てを教育した。
あまり器用とは言い難い陽世…。四苦八苦しながらも、必死に頑張っていた。
何処に出しても申し分ないと言える程になった頃には、彼女は少しずつ少しずつ笑顔を覚え…時に反抗的な顔すらして見せるようになった。
『いやです!あたくしはそんなこと知りません!』
萌黄の着物に身を包み日本人形さながらの少女が頬を膨らませツンとそっぽを向いている。
その仕草はまるで我が儘を言う姫様のようだ。
…生意気な。陽世のくせに。
『…“あたくし”ではなく“わたくし”だよ。いつになったら覚えるのだろうねぇ…。やはりこの小さな頭の中には見合うだけの脳味噌しか入っていないらしいなぁ。』
『キャー!!痛い痛い痛いですっっ!!…橙伽様の鬼畜!悪魔!ドS!!』
両手の平で小ぶりの頭をがっしり挟みギシギシ力を入れると陽世がぎゃあぎゃあと騒ぎ出す。
従順であった最初の頃とは天と地ほども違っている。