Give Me Smile―新撰組と氷姫―
まあ、どうでもいいか。
話が終わったのならば、それはそれで好都合だし。
斎藤さんに軽く会釈をすると、一言声をかけてから、土方さんの部屋へ入る。
「……神崎です。失礼します」
「あ?どうした。俺は忙しいんだ。さっさと用件を言え」
真面目に聞く気がないのか、書類整理をしながら聞いてるみたいだ。
あたしからしたら、質問に答えてくれるだけでいいので、あまり気にせずに質問していく事にする。
「……先程、雪さんから外出禁止を取り消された…と聞いたのですが。何故ですか?」
「…あの野郎、盗み聞きしやがったな…」
「……?」
あの野郎?って雪さんの事?
土方さんは忙しなく動かしていた手を止め、こちらに体を向ける。
「ああ、さっき取り消した。本当は、今晩に言うつもりだったんだが…雪の事だ。どうせ盗み聞きしてたんだろ」
「……そうですか。では、何故ですか?…あたしの…間者の疑惑はまだ晴れていないと思いますが」
話しながら、思う事がある。
この世界では『神崎千春』というデータが1つも無いんだから、疑惑が晴れる事は決して無い。
なら、どうしてまだそんなに日数は経っていないのに…外出禁止が取り消されたのか。