Give Me Smile―新撰組と氷姫―
「ま、俺はまだ正直言って、未来とかいうのは信用出来ねぇが…。お前の情報が、調べても1つもないからな」
「…え、え…!?」
意味わかんない。
頭パンクしそう。
どうして、そんなにすぐに信用してしまうの?
今も騙されていたら、どうするのよ…!
土方さんから目を逸らし、正座しながらギュッと着物の裾を掴む。
「…なんだ、嬉しくないのか?」
「い、いえ…信じられなくて」
「はっ、お前さっきからそればっかだな」
どうしよう、お祖母様。
どうしよう…!
(──嬉しい…)
お祖母様、あたし…感情なんて、とっくの昔に忘れたはずなのに。
昨日の夜から、何かがおかしい。
あたし、どうしたのかしら…。
「──で、話はそれだけか?雪にも聞いたとは思うが、夕刻迄には帰って来いよ」
「は、はい」
「んじゃ、仕事に戻れ。…雪が屯所を汚しかねん」
「……あ。…わかりました。失礼、しました」
サッと立って、ペコリとお辞儀をして、静かに障子をシャッと閉めて、早足でスタスタと歩く。
自分の(沖田さんのでもあるけれど)部屋に着いた途端、力が抜けて座り込んでしまった。
いつの間にか、足も痺れていたみたいで、動く事なんて出来なかった。
遠くからは、雪さんの悲鳴が聞こえるような気もする、けれど。
(今、だけは…)
少しだけ、少しだけ…余韻に浸らして下さい。
部屋の障子の隙間からは、初夏を感じさせる蝉の鳴き声が聞こえてきたのであった。