Give Me Smile―新撰組と氷姫―
あたしが手に取った扇子は、携帯と同じ色である、ピンクで桜の絵が施されている物。
試しに扇いでみると、ほのかに花の香りがした。
「あ、千春ちゃんが持ってるの、可愛いやんっ」
「……そうですか?」
よし、あたしはこれに決めた。
チラリと雪さんを見てみると、青い櫛を持っている。
真剣に選んでいる雪さんは、あたしよりも年は上に見える。
(…今思ったんだけど…雪さんって、実はお嬢様だったりする?)
洗濯の仕方が分からない。
掃除も全然できない。
料理なんて塩と砂糖を間違える。
(…ま、あたしも人の事は言えないんだけど…)
「……千春さん?」
考え事をしていると、不意に後ろから名前を呼ばれので、後ろを振り返ると…。
「…沖田さん」
隊服を身に纏った沖田さんが佇んでいた。
ああ、今日は巡察だったのだろうか?
後ろに一番隊と思われる人達がズラリと並んでいるし。
沖田さんは後ろにいる人に少し話すと、沖田さんだけがこちらへ来て、他の人達は巡察に戻って行く。
沖田さん…仕事、サボってるし。