Give Me Smile―新撰組と氷姫―
「千春さんはもっと自分の体を大切にすべきです!」
「……あたしの体です。沖田さんは放っておいて下さい」
「もう!何かあってからでは遅いんですよ?」
ああ、面倒くさい。
今日の夜のうちに新着メールを見ようと思ったのに。
(……沖田さんがいると見れないじゃない)
それに、医者に診てもらわなきゃいけないのは、あたしじゃなくて──。
「千春さん?」
「………沖田さん、体調はどうですか?」
「え、体調?健康ですよ?」
扇子を扇ぐ手を止め、沖田さんを見つめる。
沖田さんはいつも通りの笑顔で、ニコニコと笑っている。
「あ、もしかして心配してくれたんですか?嬉しいです!」
「……そう、ですか」
いつも通りの笑顔のはずなのに。
今日は何故だか、その笑顔を見て苦しくなった。
(…言えない。言える訳がない)
沖田さんは、武士らしく討ち死にしたわけでも、切腹して死んだわけじゃない。
こんな、優しくて過保護でお節介な人に…『労咳』を患ってしまう、なんて言えるわけがない。
あたしは、小さくため息を吐いて、部屋へと戻ったのだった。
「あれ?僕なにか余計な事言いましたっけ…?」
首を傾ける沖田さんを残して。