Give Me Smile―新撰組と氷姫―





────
──────
─────────



小学6年の冬。

最愛の母がこの世から消えた。


原因は、心筋梗塞。


(…あれ、あたし…)


また夢みてるんだ。

今度は、ふわふわ宙に浮いていて、何故だか自由自在に空が飛べる。



『ねー、千春』


『なに?千香』


『どうして、お母さん死んじゃったの…?』


『それは…』



葬式が終わり、会場には誰もいなくなっていた。

だけど、あたしと千香だけはお母さんの冷たい体の前から動かなかった。


……いや、違う。

動きたくなかったんだ。



『千春頭いいじゃん!千香にも教えて!教えてよぉ…っ!』


『…「しんきんこうそく」だって。お母さん、病気だった、って、向こうの人言ってた』


『なにそれ?お母さん、勝手にいなくなっちゃう、なんて…ずるい…っうぅ…』



千香の目から、とめどなく大粒の涙が溢れてくる。

式の最中は全然泣かなかったのに…、やっぱり我慢してたんだ。


千香の体をギュッと抱きしめると、制服に大きな涙の跡を作っていく。



『千香…、千香。泣かないで』


『ふぇぇっ…なんで?っなんでぇ?…千春…っ』



涙が止まらない千香を見ていると、あたしも泣きそうになってくる。


──お母さんが、死んだ。


その事実が、まだあたし達姉妹には受け止めきれなくて、あたしも静かに涙を流した。





< 201 / 266 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop