Give Me Smile―新撰組と氷姫―





あたし達は、まだ12歳というちっぽけな年齢で、両親がいなくなってしまった。


父親は、あたし達が生まれてすぐに亡くなったらしい。

その理由を、お母さんは教えてくれなかった。



『千春…千香達、どうなっちゃうの?』


『…わかんない』


『──あら、まだここにいたんだね?千春、千香』



あたしが首を振った瞬間、あたしの背後から厳格そうな声が降ってきた。


ビクッとして後ろを振り向くと、上品そうな、不機嫌そうなおばさんがいた。



『おばさん、誰…?』



雰囲気だけで苦手と判断したのか、千香があたしの手を握りながら尋ねる。


あたしも怖くて、何故だかわからないけど、この人だけには逆らっちゃいけない…!と、子供独特のサイレンが流れていた。



『あ?おばさんなんて言うんじゃないよ。…これだからガキは嫌いなんだ』



チッと舌打ちをされて、あたしと千香は震える。

なんだか自分達が、物凄くこの人の地雷を踏んだ気がした。



『これからは、お母様、と呼びなさい。

あたしゃ姉さんの妹だからね、あんたら二人を引き取る事になったんだよ。

今からあんたら二人の名字は、白石じゃない。神崎になるからね。


…よく覚えておくんだよ』



お母様…?

どういうこと…?

どうして、あたし達の名字が神崎に変わっちゃうの?


まだ子供だったあたしには、このおばさんが言っていた事が半分も理解できていなかった。


これが、あたし達と神崎家との出会いだった。





< 202 / 266 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop