Give Me Smile―新撰組と氷姫―
あたし達は、まだ12歳というちっぽけな年齢で、両親がいなくなってしまった。
父親は、あたし達が生まれてすぐに亡くなったらしい。
その理由を、お母さんは教えてくれなかった。
『千春…千香達、どうなっちゃうの?』
『…わかんない』
『──あら、まだここにいたんだね?千春、千香』
あたしが首を振った瞬間、あたしの背後から厳格そうな声が降ってきた。
ビクッとして後ろを振り向くと、上品そうな、不機嫌そうなおばさんがいた。
『おばさん、誰…?』
雰囲気だけで苦手と判断したのか、千香があたしの手を握りながら尋ねる。
あたしも怖くて、何故だかわからないけど、この人だけには逆らっちゃいけない…!と、子供独特のサイレンが流れていた。
『あ?おばさんなんて言うんじゃないよ。…これだからガキは嫌いなんだ』
チッと舌打ちをされて、あたしと千香は震える。
なんだか自分達が、物凄くこの人の地雷を踏んだ気がした。
『これからは、お母様、と呼びなさい。
あたしゃ姉さんの妹だからね、あんたら二人を引き取る事になったんだよ。
今からあんたら二人の名字は、白石じゃない。神崎になるからね。
…よく覚えておくんだよ』
お母様…?
どういうこと…?
どうして、あたし達の名字が神崎に変わっちゃうの?
まだ子供だったあたしには、このおばさんが言っていた事が半分も理解できていなかった。
これが、あたし達と神崎家との出会いだった。