Give Me Smile―新撰組と氷姫―





鰈を買った後、次は八百屋を探すためにスタスタと歩く。

ずっと無視をしているのに、名無しさんはめげすにあたしの隣を歩く。


正直、物凄く目障りだ。



「ね、次はどこ行くの?まさかまた魚屋じゃないよね?」


「僕、なんか小腹空いてきた。ね、そこの甘味処で美味しいもの食べよ?」


「奢るし、いくら食べてもいいんだよ?ゆっくりまったり世間話でもしようよ」


「ちょっと、お嬢さん聞こえてるんでしょ?返事くらいしなよ」



なんなの?

どうしてあたしの隣を犬みたいにちょこまかと歩くわけ?


もしかして…オープンなストーカーになってる?

いや、だけど…特に恨みを買うような事はしてない。


(……やっぱり、ただの悪趣味なだけかしら)



「ねぇ、お嬢さん。最近やたら熱くなったり寒くなったり大変だね」


「…………?」



あたしが八百屋を見つける前に、名無しさんは話の流れを変えた。


まるで、本当に世間話のような感じがするけれと…。



「お嬢さんの買う量を見てたらわかるよ。何処かの旅館の女中でもしてるんでしょ?」


「あ、それとも女将さんとか?」



(……なんだろう。名無しさんは、何を探っているのだろう…)


……なんだか、簡単に答えてはいけないような気がする。





< 205 / 266 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop