Give Me Smile―新撰組と氷姫―
鰈を買った後、次は八百屋を探すためにスタスタと歩く。
ずっと無視をしているのに、名無しさんはめげすにあたしの隣を歩く。
正直、物凄く目障りだ。
「ね、次はどこ行くの?まさかまた魚屋じゃないよね?」
「僕、なんか小腹空いてきた。ね、そこの甘味処で美味しいもの食べよ?」
「奢るし、いくら食べてもいいんだよ?ゆっくりまったり世間話でもしようよ」
「ちょっと、お嬢さん聞こえてるんでしょ?返事くらいしなよ」
なんなの?
どうしてあたしの隣を犬みたいにちょこまかと歩くわけ?
もしかして…オープンなストーカーになってる?
いや、だけど…特に恨みを買うような事はしてない。
(……やっぱり、ただの悪趣味なだけかしら)
「ねぇ、お嬢さん。最近やたら熱くなったり寒くなったり大変だね」
「…………?」
あたしが八百屋を見つける前に、名無しさんは話の流れを変えた。
まるで、本当に世間話のような感じがするけれと…。
「お嬢さんの買う量を見てたらわかるよ。何処かの旅館の女中でもしてるんでしょ?」
「あ、それとも女将さんとか?」
(……なんだろう。名無しさんは、何を探っているのだろう…)
……なんだか、簡単に答えてはいけないような気がする。