Give Me Smile―新撰組と氷姫―
「……名無しさんには関係のない事です」
「えぇ、いいじゃん。教えてよ」
歩みを止めることなく、素っ気なく答えておいた。
名無しさんの考えている事がわからないから、本当の事は言えないし言うつもりもない。
ただ、何かが引っ掛かるような気がするんだ。
(……てか、名無しさんこそ何者なのかしら?いつも昼間に現れるけれど…)
あたしの事はしつこいくらい聞いてくるし、無理に隣をちょこまかと着いてくる。
だけど、名無しさんはあたしと一緒で名前すら教えてくれない。
名無しさんは、一体……。
「ね、お嬢さん」
「……」
隣にいる名無しさんをチラリと見る。
彼の笑顔は、いつもの含み笑いから苦笑いに変わっていた。
「何処に行くの?気のせいかな?……だんだん町の外れに来てるんだけど」
「……あ」
「此処でも、何か買う物があるの?」
しまった。
つい考え込んでしまって、大通りから大幅にずれてしまっている。
そのせいか、店は無くなり活気がなく、民家もずいぶんと寂れていた。