Give Me Smile―新撰組と氷姫―
寂れてしまっている民家は、台風が来ればすぐに壊れそうなくらいボロボロで。
だけど、
「あははっ!!兄ちゃん待って〜」
「ほら、こっちこっち!」
寂れている部分を充分に補えるくらい、活気に満ち溢れている。
仲がいい兄弟みたいで、追い駆けっこをしているみたいだ。
「あ!トシだ!」
あたしと名無しさんがボーッとしていると、兄弟の二人が名無しさんを指差してニコニコと駆け寄ってきた。
(……『トシ』…?恐らく、名無しさんの名前よね?)
「元気そうだね〜。母上は体調どうだい?」
(…え…)
名無しさんの表情に少しだけ目を見開き、驚きを隠せない。
「母ちゃん?今日は元気だよ!いつもより笑ってるし」
「ばか!あれは空元気なんだよっ!」
名無しさんがしゃがみ込み、兄弟達と目線を合わせる。
驚いたのは、名無しさんの表情が……。
「あはは、そうだね。また休みの日にお邪魔する事にするよ」
「やだ!今がいいっ!!」
「トシは忙しいんだよ!…ぜったいまた来てよ?」
ムカつくような含み笑いじゃなくて、心から笑っている笑顔だったから。