Give Me Smile―新撰組と氷姫―
そりゃあ、名無しさんだって人間なのだから笑ったりするんだろうけれど…。
あたしの前では含み笑いとか苦笑いとか、全然素の表情を見せなかったから、少し驚いている。
「トシ!ちょっとだけ遊ぼう?」
「…俺も、もう少しトシといたい」
「うーん…。そうだね…」
名無しさんは、まだ6歳くらいであろう兄弟から視線を外すと、上目遣いにあたしを見上げた。
……気持ち悪い。
あたしはまだ魚しか買っていないから、早く大通りに戻りたいんだけど…。
「ね、お嬢さん。駄目?」
「…………は?」
駄目?って…何が?
(……まさか…)
あたしが眉間に皺を寄せたと同時に、名無しさんは口を開いた。
「お嬢さんも一緒に遊んでくれるでしょ?」
「……い、」
「うわぁ、この綺麗な女の人も一緒に遊んでくれるの?」
「本当!?やったー!!」
………嫌、って言おうとしたのに。
名無しさんが無責任な事言うから、今度はあたしが兄弟に囲まれる羽目になった。