Give Me Smile―新撰組と氷姫―
ゾクリ、と背中に寒気が走る。
物凄く逃げたい、けれど…逃げちゃいけない。
名無しさんに聞きたい事は、全部で3つあるのだから。
まず、1つ目……。
「………あたしの事、何処まで把握済みなんですか?」
「今日は随分と大胆だね。うーん…と」
名無しさんは少し目を見開き、顎に手を添えて考える素振りを見せる。
でも、質問が想定内だったのか、興味なさげに口を開いた。
「名は神崎千春。
今年の春から新撰組屯所に住み込み、女中を勤める。
ただ、身元、年齢が詳細不明で、情報が何故か全くない…ってとこかな。
お嬢さん、何か間違ってる?」
名無しさんに問われ、あたしはふるふると首を横に振った。
(……やはり、この時代でも調べたら…このくらいはわかるのね)
自分を落ち着かせる為に、小さくため息を吐く。
少しだけ、何も知らないって答えを期待していたけれど…現実は甘くない、か。
だが、今の答えで名無しさんが危険人物である可能性が高まった。
それに、今思えば初めて会った時だって…。
「じゃあ、次は僕が質問するよ。
お嬢さん…君は何者?」
「………え…?」
名無しさんの質問の意図がわからず、首を傾ける。
何者?…ってどういうこと?
情報が不自然な程ないから、ただ気になっているだけなのかしら?