Give Me Smile―新撰組と氷姫―
緊迫感がある空気と、ジリジリと容赦のない紫外線。
最早暑いのか寒いのかわからないけれど、嫌な汗が滲んできているのはわかった。
(……あたし、は…)
ギリ、と歯を食い縛る。
確かに、新撰組に関わる危険因子は除去しておきたい。
だけど、それは…あたしにメリットなんて無くて。ただ、あたしが自分から危険な方へ行き、身の危険を高めているだけ。
じゃあ、どうして、名無しさんを少しでも新撰組から遠ざけようとしているのだろう…?
静かに目を瞑ると…瞼の裏には、信頼できる彼等がいる。
(……あたしは、ただ……)
──『てめぇ、薬だけでも飲め』
風邪をひいたあたしに、ぶっきらぼうな言葉と苦そうな薬。
その言動の裏には、心配と沢山の優しさが詰まっていて…分かりにくい不器用な人。
──『……ああ、ありがとう』
仕事ついでにお茶を淹れただけなのに、ふと見えた小さな微笑み。
いつもは寡黙な人だけど、心からの感謝を忘れない誠実な人。
──『うん、やっぱりその扇子は千春さんに似合ってますね!』
巡察中にも関わらず、途中で抜けて贈ってくれたのは扇子。
甘味が大好きで、面倒くさいくらいの過保護で…いつも太陽みたいに笑っている人。
「……あたしは…ただ…」
瞑っていた目を開ける。
そして、強い意志を持って、名無しさんの言葉に答えた。
「──彼等を、傷つけたくない。…ただ、それだけの単純な動機です」