Give Me Smile―新撰組と氷姫―
どうして泣いているの…?
泣いたって、時間の無駄だからやめたのに。
ポタポタ、と頬を伝って着物に落ちていく涙を見ながら考える。
今更、死ぬのが惜しくなった?
ううん、別に彼等の為と思えば別に怖くない。
意味がわからない。
涙って、どうやって止めるんだっけ…?
「千春、もうあんな奴らやめたら?」
静かな部屋に、名無しさんの声とあたしの泣き声が響き、グイッと顔を向き合うように座らされる。
そして、頭と背中に手を回されて座ったまま抱き締められる。
それに少しだけ眉をしかめて名無しさんの表情を見ると、そんな事気にしないようにクスリと笑った。
何なの、この人。
あたしを、どうしたいの?
利用?
それとも、本気で…?
「僕なら、君を泣かせたりしない。生活だってもっと安定することだって出来る」
「………やだ…」
「もう、僕を選びなよ」
「…っ……」
あたしは、返事を返す事が出来なかった。
もう、何もわからない。
何も考えたくない。
放っておいて、でもそれは嫌だ。
自分の感情がドロドロして、息苦しい。
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名無しさんに抱き締められている間、あたしの携帯は水色に点滅していた。