渋谷33番
「・・・ケース?」
雪乃が何かを考え込むようにつぶやくのを、女刑事は見逃さなかった。

「そうよ、覚せい剤はケースに入っている。心当たりがあるの?」

「あ・・・ケースなら、あれ、でもあのケースは・・・」

「場所を言いなさい」
身を乗りだして問いただす。

 雪乃の目が左をゆっくり向く。その先には冷蔵庫があった。
「冷蔵庫の中に、ケースが・・・」
そう言いながらも雪乃は、信じられないとでも言いたそうな表情をうかべている。

「調べます」
刑事がすぐに冷蔵庫を開ける。一番上の棚を調べだすのを見て、
「そこではなくて・・・チルド室のほうです」
おそろおそる雪乃は伝えた。

 刑事は一瞥をくれたあと、乱暴にドアを閉めると中腰になってチルド室を開けた。

「ありました!」
びっくりするほどの声を上げて刑事はそのケースを両手で取り上げると、こちらに見せた。

 何かを確信したかのように、女刑事は満足そうに微笑んだ。


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