渋谷33番
 植園は煙草を灰皿にもみ消しながら笑った。
「よくお分かりで」

「植園ちゃんが携帯に電話してくるなんて、そういうことしかないもん。今度一杯おごりなさいよね」

「おおせのとおりに」


 受話器を置くと、植園は後ろの席を見た。吉沢と目が合うが、彼はそしらぬ顔で書類にまた目を落とした。

「ま、一応ね」
誰に言うとでもなく言うと、吉沢も、
「ですね」
とクールに返した。



 かわいくないやつだ。



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