渋谷33番
「あくまで可能性。第一容疑者は山本雪乃のままよ」

「でも、DNAの説明がつきません。もし、山本雪乃が犯人ならば、封筒の文字については説明がつきます。しかしそこに松下野々香のDNAがあるのはおかしいですよね」

「文字は山本、切手は松下・・・。どうして一致しないのかしら。もし松下が山本をハメるつもりなら、DNAには気をつけそうなものじゃない?」

「山本雪乃の訴えが正しい可能性もあるわけですし、拘留期限は20日まで延長できたとしても、起訴に持ち込めるでしょうか?」
吉沢はメモを植園に返しながら言った。

「もちろん起訴できるわよ。あのねぇ、何度も言わせないで。あの子が犯人なのは長年の勘から確かなの。自宅にあった大量のブツで余裕で起訴に持ち込んでやる」

「しかし、弁護士はこのDNAをつついてくるでしょう」
指差した先には、植園のメモ。

 黙って植園はそれを眺めていたが、
「とにかく、松下野々香をもう一度ひっぱりましょう。今度は任意じゃなく強制で連れてきなさい。松下の弁明がどういうものか、聞いてみてから判断しても遅くない」
とため息まじりに言った。







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