渋谷33番
 部屋に戻るとキャシーがひとりで横になっていた。

「あれ、和美さんは?」

「ドクボー」

「は?」
よく聞き取れずにそばによって座った。

「ドクボー イレラレタ。トナリノヘヤノ オンナ ケンカシタ」

「え?なんで?」

 一生懸命日本語を考えながら、たどたどしくキャシーが説明するところによると、昼食後弁護士が面会に来た和美はそれを終え部屋に戻る途中に、他の部屋の女性とぶつかり言い合いになったそうだ。そこでやめておけばいいものを次第にそれはエスカレートし、ついには殴り合いにまでなったそうだ。

「ダイジョブ カズミ ワラッテタ スコシデ モドルッテ ワラッテタヨ」

 彼女ならやりそうなことだ。血の気の多さは関西人っていうからではないらしい。


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