渋谷３３番

　横断歩道を隔てた向こう側に、警察官が２名立っていたのだ。

　ひとりと目が合うのが分かった。

　自然に目をそらせばいいのに、なぜか和美はその警察官から目を離せずにいた。

　それどころか、まるですべての悪の根源がその警察官にあるかのように険しい目でにらみ続けたのだった。

　警察官がとなりに耳打ちをすると、もうひとりがこちらを見た。

　
＿＿＿逃げろ


　自分の中で叫ぶ声がするが、足は動かない。

　まるで、逃げてしまえば永遠にこの苛立ちは消えない、という幻想にとらわれてでもいるようだった。



　歩行者信号が青に変わり、人の波が動き出した。