渋谷33番

 植園はぼんやりと窓から見える景色を眺めていた。

 雨の降る東京の町は、色を失い、歩く傘の群れも悲しげに見える。

 ガラス越しには喧騒も聞こえず、無音の朝は重苦しく感じる。

「今夜は泊まりか・・・」
明日の朝まではフロアにいることになる。体力は問題ないが、進まない捜査には辟易してしまう。

 捜査資料をパラパラとめくるが、見なくても頭には入っていた。

 上層部からは、何度も捜査状況について尋ねられてる。山本雪乃を逮捕した時には、この事件も終盤を迎えたと信じていたものだ。それが、拘留期間は最長の20日までいきそうな気配だし、日に日に容疑が疑わしくなってきている。

 当初は10人で捜査にあたっていたチームも、日々起きる事件からか今では吉沢とふたりっきりになってしまった。

 煙草を取り出すと、深く吸い込みニコチンを身体に染みわたらせる。


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