渋谷33番
 それを聞くと、植園は、
「分かった」
とだけ言って、乱暴に受話器を置いた。

「まったく・・・」
腕を組んで目を閉じた植園に、吉沢が近づいてきた。

「だめでしたか」

「まぁ、仕方ない。確かに理由は弱いからね。まだ松下の行方は分からず?」

「ええ。たまに電源が入っているのは確認できるのですが、場所を特定できるほどではないんです」

「万策尽きる、か・・・。まいったね」
なぜか植園は吉沢を見て笑った。

「このままだと、どうなるんでしょうか?」
空いてる机から椅子を持ってきて腰かけた。

「あと数日で20日の拘留期限。そうなると、山本雪乃の処分を検事がすることになる。おそらく、この段階の調書では覚せい剤所持での起訴のみ、ってとこね。販売の罪には問えないわね」



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