渋谷33番
「・・・何か知ってるんですか?」
眉をひそめて植園は尋ねた。

「その顔だよ、その顔。ようやくいつもの植園君らしい表情になった」
声を出して古谷は笑う。

 黙って次の言葉を待つ植園に、古谷は、
「いや、すまんすまん。時間がないんだよな」
と手で垂直に宙を切った。

「いったい何を?」

「それがな、松下野々香という女性の行方を追っているだろう?」

「はい。第2の容疑者とみていますが」

「家庭課でもご家族からの捜索願いを受け取っている。しかし、未だ行方は分かっていない」

 こんなに回りくどい言い方をする男だっただろうか。

 植園は自分の苛立ちを再び感じ出していた。



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