渋谷33番
 結局、雪乃が黙ってしまったせいで、取り調べは数時間におよんだ。

 といっても、女刑事がひとりで脅かしたり、時にはなだめたりしてなんとか聞き出そうとしゃべりまくっていただけで、雪乃自身はただ黙っていただけだったが。

「もういい、また明日聞くわ。でもね、あなたが黙っていればいるほど、家に帰るのが遅くなるだけよ。それだけは肝に銘じておくことね」
パソコンをバタンとたたむと、女刑事は強い口調で言い捨て部屋から出て行った。

すぐに吉沢が入ってくる。
「おつかれさまでした。じゃあ、手錠しますね」
両手を挙げると、再び重い手錠をつけられた。金属の感触とその重さに、思わず身が引ける思いをする。

「さぁ、それでは行きましょうか」

 気づかなかったが、この吉沢という刑事、意外にやさしく、そして意外にもかっこよかった。

「これからどこへ行くのですか?」
腰にロープをつけられて歩き出す。

「まずは、写真と指紋を撮影してもらいます」


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