渋谷33番
「お嬢様、お帰りなさいませ」
微笑みながら、頭を下げる。

「ほんっと、大変だったわ。あの植園っていう刑事、これみよがしに煙草吸いやがって。何度もキレそうになったよ」

 工藤も向かい側に腰かけ、
「アネキ、ほんっとしおらしく演じてましたもんねぇ。はじめて面会に行った時、正直あせりましたよ」
とテーブルに肘をつき両手を頬にのせた。

「まぁさ」
雪乃は足を組みながら、
「あいつらを操作するのは並大抵では無理っしょ。特に植園、あいつは自分の信念に基づいて行動するタイプだから、『かよわい雪乃』を定着させるのは大変だったわ」
と笑った。

 高橋は、相変わらず両手を前に組みながら口をひらいた。
「いえいえ、なかなかのものでしたよ。うまく事件の犯人を松下野々香にすりかえられましたよ」

「そうそう、アネキの指示があったからこそ、事件をうまく操れたんですよ」
工藤も同意する。


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