渋谷33番
「遺書?」

工藤は、腕を腰に当てると、
「そうですよ。最後の面会の時の指示ですよ。『確実な証拠』『メール 友達に送れ』って。だから、ダミーの女を名古屋とか大阪に行かせてカードを使わせた後、遺書がわりのメールを井口って友達に送りました。彼女が大慌てで警察に飛び込んで行ったのも確認してます」
と笑った。

「あー、それで釈放になったわけね。なるほど。ま、工藤だけじゃなく、高橋もノートにいろいろ書いて私に見せることで指示を伝え合ったしね・・・。ほんと、ご苦労さま」
プルトップを開けると、炭酸が軽く宙に舞い泡のはじける音がした。

 ひと口それを飲むと、知らずに大きなため息が出た。
「高橋」

「はい」

「お願いがある」

「なんなりとどうぞ」
微動だにせず、高橋の目はやさしく雪乃をとらえる。




 


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