渋谷33番
 周りを確認すると、ブルドーザーに足をかけてよじのぼろうとした。

 簡単ではなかったが、なんとかのぼりきるとそこには意外に小さい操縦席があるだけだった。

 思ったよりも地面から高い。怖いというよりは、優越感が勝っている。

 ふと右の視界に鍵が見えた。おそるおそる腕をのばしてさわってみる。

 再び好奇心がやってくるが、その一方で『やめておけ』という自制心もでてきた。

 しばらくぼんやりと考えたあげく、和美は鍵を右にまわしてみた。

 カチッと音がしたあと、ブルルルルとすさまじい音がして、一瞬爆発でもしたのかと慌てる。左手を知らずに動かしてしまい、それがレバーのようなものに当たるとブルドーザーは大きくバウンドしてゆっくりと前進した。

___まずい!

 そう思ったときにはもう遅い。アクセルを踏んでいないのでスピードは出ていないが、確実に車体はゆっくり前に進みだしていた。

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