渋谷33番
 ホテルでの豪華なランチをごちそうになった後、和美を乗せた車は『清水総会』の建物の前で停車した。

 一見普通の会社のように見えるが、自動ドアの奥に進むとそこがいわゆる『組事務所』であることが容易に理解できた。強面の男たちが数人こちらを見る。

 皆が武藤に挨拶するところを見ると、彼はそこそこの地位があるようだった。

「この子、今日からここで働くから。和美っていう名前だ」
突然そう紹介され、あせった和美はあわてて否定しようとしたが、実際職がなくてはどうしようもない。

「岡和美です、よろしくお願いします」
ぎこちなく頭を下げ、さらに奥へと進みだした武藤を追った。

「和美おめでとう!」
サキがうれしそうに歩きながら手をたたいている。

 能天気なもんだ、と思ったが口にはせず作り笑いで答えた。


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