渋谷33番
 工藤一平は、すぐに面会に来た。高橋弁護士の仕事の早さがうかがえる。

 弁護士接見と違って、一般面会は職員の立会いがあるようだった。

「雪乃っ!!」
プラスチックのしきりに手をあてて叫ぶように言う工藤に、同行した職員も目を丸くしていた。

「一平さん、ごめんなさい。私・・・」
工藤の手にプラスチックのしきり越しに自分の手を合わせて言う。涙が次から次へとあふれた。

「いいんだよ、無実なんだろ。僕こそ君がこんな大変なときにそばにいてあげられなくてごめん」

「ううん、いいの。来てくれただけでうれしい。しばらくはここにいるけど、高橋弁護士もついてるし、きっと無実だって証明されると思うから」

 うなずく工藤の顔も、もう涙でぐしゃぐしゃになっていた。

 ふたりはしばらく無言で見つめあった。

「あと10分」
同席した職員がストップウォッチを見ながら言った。





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