渋谷33番
「うん、少しずつでも栄養とらないと」

「あの」エレベーターが上昇してゆく中、雪乃は尋ねた。
「吉沢さんも私が嘘をついてるとお思いですか?」

 吉沢は一瞬驚いた顔を浮かべたが、すぐに目をそらして言葉を選ぶように言った。
「それは分からない。僕は先輩から、『被疑者はとにかく疑え』と教え込まれているから」

「あの女刑事さんですか?」

「うん、植園さんって言うんだ。冷たく見られがちだけど、ちゃんと被疑者のことも考えてくれている立派な人だよ。だから君も本当の事を話したほうがいいと思う」

 エレベーターが7階に着き、静かにドアが開いた。

「分かりました。もう黙秘などせず、全て話します」

 目を上げると、薄暗い廊下が伸びていた。



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