渋谷33番
 ふるふると雪乃はクビを振ると、
「私・・・私、本当に覚せい剤なんて知りません。信じてください」
と声に出した。驚くくらい小さな声だった。

 女刑事はあごを上げた姿勢で黙って雪乃を見た後、
「私たちはやみくもにここに来たわけじゃないの。ちゃんとした確信があったからこそ来ているのよ」
と、いくぶんやわらいだ声で言った。

「寝室からは何も見つかりませんでした」
刑事のうちのひとりが戻ってきて報告した。

___こんな短時間でもう調べたってこと?

 その手際の良さに、変なところで雪乃は感心した。

「洗面所もありません」
そちらから屈強そうな刑事が顔をだして言う。

「フン」
分かっているとでも言うように女刑事は鼻をならした。
「おそらく何かしらのケースにでも入っていると思う。もう一度くまなく探しなさい」
そちらを見ようともせずに指示をだす。



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