流れ星を探して
第1章 出会い
月島蘭はぼんやりとしたチャイムの音で、目を開いた。

ボヤけた視界の焦点が少しずつはっきりし始め、蘭は軽く頭を振った。

眠ってしまった……。

蘭はため息をついた。

いつもこうだ。

お昼からの授業は、身に入らない。

ついつい睡魔が襲ってきて、眠ってしまう。

たいてい先生から頭を小突かれたり、背中を叩かれたりするのだが、今日は気づかれなかったようだ。

「おい、電車乗り遅れるぞ。今日はテストだから、遅刻できないよ」

「そうだな」

後ろの席から聞こえてくる会話に、蘭は振り返った。

クラスメートの男の子が、慌ただしく帰り支度をしている。

急いで鞄に教科書を詰め込むと、2人で教室を飛び出して行った。

予備校のテストなのだろうか。

蘭はゆっくりと視線を戻した。

他の生徒も、忙しそうに教室を出ていく。

みんな、予備校や塾に行くのだろう。

蘭は予備校には行っていない。

高校3年生にもなれば、ほとんどの生徒が、予備校や塾に行く。

明確に○○大学法学部、○○大学医学部などと、将来の目標を持ち、大学を目指す生徒もいれば、なんとなくみんなが行くから、遊びたいから、という理由で、大学進学を考えている生徒もいる。

蘭には、将来の夢がなかった。

大学に行きたいとも思わない。

かといって、やりたい仕事もない。

進学か就職か。

もうすぐ夏がやって来る季節になったというのに、蘭はまだ答えを出せないでいた。



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