流れ星を探して
「……」

蘭は小さくうなずいた。

ピーターはニコッと笑うと、軽々と防波堤に上がって蘭の横に座った。

制服のシャツが、触れるか触れないかくらいの距離だ。

少しでも動いたら、手が触れてしまう。

蘭は思わず、両手を腿の上で握りしめた。

「ここに来たら、会えるんじゃないかと思って、来てみたんだ」

「えっ?」

蘭はびっくりして、ピーターの顔を見た。

「昨日、なんだかおかしかったから」

「……」

だから、あなたのせいなんですけど。

蘭は心の中でつぶやいた。

「蘭は、どのコースにいるの?教室はどこ?」

蘭……。

こんなふうに、男の人から名前を呼ばれたのは、きっと初めてだ。

――お父さん以外に。

「東校舎。総合コース、普通科だよ」

「そうか。だから今まで会わなかったんだ」

ピーターが、納得したようにうなずいた。

そして、少しの沈黙。

蘭は少し焦った。

何か話さなきゃ。

「あの……」

「蘭は……」

蘭とピーターの声が重なった。

「あ、ごめん……」

蘭は慌てて謝った。

「どうして謝るの?」

と、ピーターが蘭の顔をのぞきこんだ。

「いいよ。蘭が話して」

と、ニッコリ笑う。

「あの……日本語、上手だね」

「本当?嬉しいな」

ピーターはパッと顔を輝かせた。

「ぼくのお父さんは、日本のT電子のカリフォルニア支社で働いているんだ。転勤で8~13歳まで日本にいたんだよ。日本は2度目なんだ」

「ふ~ん」

蘭はうなずいた。



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