流れ星を探して
「蘭は、この近くに住んでいるの?」

「うん。――歩いて5分くらい」

「いいな。海の近くだね」

「うん。ピーター……さんは?どこに住んでいるの?」

「アハハッ」

ピーターはおかしそうに笑った。

「“さん”はいいよ。ピーターと呼んでほしいな」

と、蘭を見る。

「あ、はい……」

と蘭は下を向いた。

と、また、沈黙になる。

ピーターはしゃべらない。

なに?

私、なんか怒らせた?

蘭は沈黙に耐えきれなくなって、おそるおそる顔を上げた。

ピーターは、じっと蘭を見ている。

「あの……」

「ほら。呼んでよ。待ってるんだよ」

と、ピーターは言った。

「え?」

「ピーターと呼んで」

と、笑う。

蘭は、カーッと顔が熱くなるのを感じた。

男の人を、名前で呼んだことなどない。

○○くんとか、○○さんでしか、呼んだことがないのだ。

今まで誰とも付き合ったことがないのだから。

上目使いでピーターを見ると、まだ蘭の顔を見ている。



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