流れ星を探して
蘭は、ゴクリとつばを飲み込んだ。

「ピ、ピーター……」

聞き取れないほどの、小さな声だ。

「ありがとう」

ピーターはそう言って、蘭の肩をポンポンと叩いた。

何気ないピーターのしぐさに、蘭はいちいち身を固くした。

何しろ、免疫がないのだ。

男の人が身体に触れるなんて、経験がないのだから。

「ぼくは、少し街に入ったところだよ。桜木町ってところ」

「あぁ。うん、わかるよ」

と、蘭はうなずいた。

「いつもは校門を出て、3丁目の通りを歩くんだ。だから、海岸通りに来たのは、昨日が初めてなんだ」

「……」

「カリフォルニアの家は、海の近くにあるんだよ。それで懐かしくなって、ここに来たんだ」

「帰りたいの?アメリカに」

と、蘭は聞いた。

少し、ピーターの声が沈んだような気がしたのだ。

ピーターはすぐには答えないで、蘭の顔を見て

「昨日まではね」

と、言った。

「蘭に会えたから」

「え?」

「もう少し、頑張ってみようかな」

ピーターはそう言うと、海に視線をうつした。

穏やかに寄せては返す波音が、心地よく響いている。



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