流れ星を探して
「行ってごらんよ」

と、佐雪は言った。

「どこに?」

「海岸通りよ。いつも会う場所」

「どうして?」

「本当に好きだったら、そこに行ったら会えるかもしれない、そう期待して行くものよ」

「まさか」

「まったく、本当に私の子なの?奥手にもほどがあるわよ。恋愛は受け身じゃダメよ。本気で好きならどんどん攻めなさい!」

佐雪はそう言うと、蘭の手を引っ張って玄関につれて行った。

「いなかったら、帰ってくればいいのよ」

と、背中を押す。

蘭は佐雪の勢いに押されて、言われるままに傘を持って玄関を出た。

雨は止む気配がない。

街全体が、しっとりとした雰囲気に包まれている。

蘭は傘をさして歩き出した。

いるわけない。

蘭はそう思った。

約束もしていないのに。

ピーターとは、ただ話をするだけ。

好きだとか、付き合いたいだとか、そんな言葉をを言われてもいないのに、佐雪のように前向きには考えられなかった。

ピーターと話ができるようになっても、毎日家まで送り届けてくれても、蘭はあいかわらず自分に自信が持てないでいた。


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