流れ星を探して
蘭はこの海岸通りが好きだった。

防波堤にペイントされた、抽象的な絵を眺める。

いつだったか、家族で行った沖縄。

この通りには、沖縄の砂辺という海岸のような雰囲気が漂っていた。

もっともここは沖縄ではないから、砂辺のように、頭上を猛スピードでかすめる米軍の戦闘機も、岩場で戯れる米軍ダイバーもいない。

蘭はヒョイッと、防波堤に飛び乗った。

腰を下ろして、海に向かって足を放り出す。

海から吹き抜ける風が、心地いい。

もうしばらくすると、真っ赤な太陽が、水平線へと沈んでいく。

蘭はその風景を、眺めるのが好きだった。

一番、心が安らぐ時間。

ここに座っていると、嫌なことも、不安なことも、何もかも忘れられる気がした。

蘭はあぐらをかいて、肘を膝に置き、ほおづえをついた。

目を閉じると、髪を揺らす風と、絶えることのない波音に耳を澄ませた。


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