流れ星を探して
海岸通りにあるカフェ。

雨に冷やされた風が、テラスに心地よく流れている。

アイスコーヒーのグラスの水滴が流れ落ちて、コースターを濡らしていた。

向かい合って座るのは初めてだ。

「先週の休みも、来てたんだ」

と、ピーターが言った。

「土曜日も日曜日も、蘭に会えるかもしれないと思って」

「そうなんだ。――ごめんね」

「謝らないで。蘭が悪いんじゃない」

ピーターは首を振りながら言った。

「家に行く勇気もなくて、ただ座ってぼんやりしてただけだよ」

「携帯は持ってないの?」

蘭はふと思い出してたずねた。

ピーターが携帯電話を持っているところを、1度も見たことがない。

「持っているよ。でも、あまり好きじゃないんだ」

と、ピーターは顔をしかめた。

「今の人たちは携帯に振り回されてる。そう思わない?」

「うん。そうだね」

「蘭は?」

「私はメールするような友達もいないし、彼氏もいなかったし、お母さんと電話するくらい」

と、蘭は笑った。



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