流れ星を探して
いつの間にか、眠ってしまったのか、意識が途切れてしまったのか、ふっと現実に戻ったような感覚がして、蘭は目を開けた。

少し、空も黄昏てきたようだ。

「起きた?」

突然、耳のそばで声がして、蘭は驚いた。

思わず顔を横に向けると、目の前に、くっつきそうなほど近くに、顔があった。

「イヤッ!」

蘭はとっさに相手を、力一杯突き飛ばしてしまった。

相手はバランスを崩すと、体を横向きにして防波堤から落ちた。

ドンッという鈍い音と「ウッ!」という声に、蘭は顔をしかめた。

蘭は急いで飛び降りると、お尻を押さえてうなっている男の肩に、おそるおそる手を置いた。

「大丈夫?……ですか?」

よく見ると、蘭の高校の制服だ。

顔は見えないが、少し黄みがかった茶色いサラサラの髪。

男はよほど強くお尻を打ち付けたのか、まだうなっている。

「ごめんなさい。ねぇ、ちょっと……病院、行く?」

見ているととても痛そうで、蘭は思わず携帯電話をスカートのポケットから取り出した。

「お母さん呼ぶから、病院行こう。ちょっと、待ってて」

蘭は短縮番号で、母親を呼び出そうとした。

「あれ?何番だっけ」

動揺していて、思い出せない。

「えーっと」

懸命に思い出そうとして、目をつむった瞬間、携帯を持つ両手を、温かいものがやわらかく包んだ。

驚いて目を開けると、男が蘭の手を握っていた。

「大丈夫。病院、行かないよ」

男はニコッと蘭に笑いかけた。




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