龍とわたしと裏庭で②【夏休み編】
「悟くん、ありがとう。助かった」

隣のクラスの羽竜悟くんは圭吾さんの従弟で、わたしが一緒にいても圭吾さんが嫌がらない唯一の男の子。

「わたし、時々『お姫様』って呼ばれるのどうしてかな? 悟くんもそう呼ぶよね」


「しづ姫が来た時、噂になったんだ。貴子伯母様が圭吾の嫁にどこかの名家のお姫様を連れて来たって。うちの家族は今でも『本家のお姫様』って呼んでるよ。ほかの親戚もそんな感じじゃないかな」


「本当? わたし、昨日は『見栄えのしない子供』って呼ばれたわ」


「容子オババだろ」

悟くんはニヤッと笑った。

「夕べうちのお袋に電話よこして何かがなってた。心配しなくていいよ。うちは全員、うちの兄貴と圭吾が和解したのはしづ姫のおかげだと思ってるから」


悟くんのお兄さんと圭吾さんは恋人の優月さんをめぐって何年も仲たがいしてた。


「今日は圭吾とお出かけ?」


「デートするの」


「デート?」


「デートして圭吾さんを『彼氏』って思うようにするの」


「まだそんなところでもたついてんの?」


「だって……」
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