龍とわたしと裏庭で②【夏休み編】

〈鬼の首塚〉は町の北側、小高い丘の上にある。

長い石段を上ると小さな祠があって、その横にしめ繩を巻かれた巨大な岩が立っている。

車は細い舗装道路をくねくねと曲がり、岩の裏側にある広場に出た。


「ここ、車で来れるのね」

「一般車両は通行禁止だよ。石段の下の駐車場までだ」

「わたしたち一般車両じゃないの?」

「呼ばれたんだ」


圭吾さんが示す方を見ると、パトカーが一台停まっている。

さらに向こうにマイクロバスも一台


圭吾さんは車を降りて、ぐるっと助手席の方に回って来た。


圭吾さんはわたしに車のドアの開け閉めを絶対にさせない

それが分かっているので、ドアを開けてもらうまでわたしは黙って待っている

圭吾さんがドアを開け、手を差し出す


お巡りさんが二人、車から降りるわたしを見ていた


周囲から見れば、わたし、すごいお嬢様みたいなんだろうな


慣れっこだけど――やっぱ恥ずかしい
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