龍とわたしと裏庭で②【夏休み編】
圭吾さんは驚いたようにわたしを見下ろしていた。

「過去は変えられないけど、これから先はずっと志鶴が一番大切だよ」

「分かってる」

「泣かないで。少し脅しがきつかったかな」

「失礼ね。泣いてなんかいないわよ」

わたしは体をよじって圭吾さんの腕から抜け出して、ベッドの上に座った。


えっ?


見慣れない部屋に唖然とした。


圭吾さんの部屋に泊まる時にいつも寝ているソファベッドじゃない

ちゃんとした本物のベッド


「圭吾さん、ここどこ?」

小さな声できいた。


「僕の寝室の僕のベッド」

圭吾さんはニコリともしないで言った。


何がなんだか分からなくて混乱していると、圭吾さんも起き上がり、片手を上げてわたしの髪の間に指を差し入れた。


「少しずつ慣れなきゃね」


「何に?」


「心配しなくてもいいよ。僕が分かっていればいい事だから」

圭吾さんは微笑んだ。

「支度しなさい。僕が送ると言ったら送るよ」
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